魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「なんだと……?」

 きつく不審そうに表情を歪めたゲルシュトナー公に対し、スレイバート様は言い放った。

「【精霊の祈り塩】は、ゲルシュトナー公家傘下の商会によって各地に流通が行われると聞いています。私たちをその製造所に招き、呪いを解除させてください! そうすれば、今後ボースウィン領はあなた方の領地の発展に出来る限りの力を尽くしましょう。ですが、この話を断られるなら――今後ゲルシュトナー領との関係は、難しいものにならざるを得ません」

 真剣な表情で、スレイバート様は決断を迫る。

 場合によっては、彼らとの関係性が拗れても構わないとも取れるその問いかけは、この後の流れを予想していたのだろうか。
 きつく唇を引き結んだあと、ゲルシュトナー公の出した答えは……。

「…………ふっ、ふざけるなぁっ‼」

 押し殺したような唸り声からの、完全なる拒絶の言葉。
 そして彼は、広間中に見えるよう、大きく手を振り上げた。
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