魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「こ、この人たち……呪いに操られています!」
「ちっ、まさかここまで汚染が進んでいやがったとはな……!」

 私を背に庇いながら、普段のざっくばらんな態度を取り戻したスレイバート様が、苦々しそうに呟く。

「大方、この城のやつらが一番に、そうとも知らず呪いの塩をたっぷりまぶした料理を貪ってきたんだろうぜ。……シルウィー、俺の側から離れんなよ」

 彼がそう言うと同時。空気を切り裂くビッという音を立てて、なにかが氷の盾に弾けた。

 一瞬見えた青い筋に、ばちゃりと広がる無臭の透明な液体は、おそらく水。
 魔法をスレイバート様に防がれたゲルシュトナー公が、獰猛に笑う。

「中々やるようだな……だがしかし、所詮戦いは数! 我が兵士達よ、死を恐れずにやつに食らいつけ! 一太刀でも入れた者は一生暮らすのに困らぬ財を与えてやる!」
「「オオォッ!」」

 荒々しい雄たけびを上げながら狂ったように攻め寄せようとした兵士たちに対し、スレイバート様の動きはそれよりも速く――。
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