魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 ゲルシュトナー公も対魔法士用の戦い方を心得ていて、中々スレイバート様に大きな魔法を放つための隙を与えない。

(私にもっと力があれば……)

 私の覚えたばかりの頼りない魔法では、彼を襲う水の魔法を防ぐことはおろか、兵士ひとりやふたりの攻撃を魔法で防ぐのがせいぜい。

「フハハハハ……! このままお前たちは捕え、王都のヴェロニカ様に献上してやろう! そして私は、この帝国でさらなる権力を掴むのだっ!」

 ゲルシュトナー公の攻撃がさらに激しさを増し、スレイバート様の表情に焦りが滲む。

 どうにかしてこの状況を覆したいが、まさかひとりひとりに触れて呪いの力を吸い取ってゆくわけにもいかない。
 無力感に私がきつく両手を胸の前で握りしめた、その時だった。

『……祈るのです』

 胸のペンダントから、ふわりとこちらを包み込むような光が広がる。
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