魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
(力を、貸して!)

 私は誰ともなしに願った。

 心の奥に沈み込むようにして深く集中した後、これまで周りの皆から貰った温かいもの――言葉や気持ちといったすべての記憶を光に変えて、解き放つ――!

「広がれ!」

 たった一瞬だが、身体の中心から発生した光の輪が、周囲を呑み込んで遠くまで駆け抜ける。

 それは直ちに折り返すと、兵士たちの身体に取り付いていた呪いを連れ去るようにして引き剥がし、淡く瞬きながら、元通り私の内部へと取り込まれてゆく……。

「うぐっ――」「う、ぁぁ……」

 続いて、一斉にそこかしこでどさどさと、鈍い音が続いた。

 呪いの制御下にあった兵士たちが、解き放たれた反動で意識を失ったのだと気付くが、しかしそれでも首魁のゲルシュトナー公は抵抗しているようで……。
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