魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「ぐうう、こんなもの! 私は、直接ヴェロニカ様からご命令を受けたのだ! それを果たすまで……倒れるわけ、にはっ!」

 二重がかった歪な声が放たれ、公は、胸から私の方向に伸びたどす黒い鎖を引き戻そうと、もがき苦しむ。

「うるせぇっ!」

 しかし、その時にはもうスレイバート様が彼の真上に飛び上がっていて……。

「大人しく、正気に戻りやがれ!」
「がはぁっ!」

 氷の剣の側面で、勢いよくその頭を叩いた。それでやっと、ゲルシュトナー公は悶絶してその場に崩れ落ち……彼の身体にしがみつくように残っていた黒い影も、抵抗力を失くして私の胸の中へと引きずり込まれていった。

 そこで呪いの気配が、完全に消える。

「ふう……。終わったみたいだぜ、シルウィー。お前も毎回、とんでもないことをやりやがるな……」
「うまくいったんですね。よかったぁ……」
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