魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 彼らに害意がもうないのなら、ここで暴れても怪我人を増やす理由もない。大人しく私たちは指示に従い、見知らぬ城の中を護送されていく。

 その最中、私たちは一段と不透明になった先行きについて囁き合った。

(困りましたね……。ゲルシュトナー公が一番呪いの影響を強く受けていましたから、早く元気になるといいのですが……)
(ま、こればっかりは、そういう流れだったと思うしかねーな。それに、正気に戻ればヴェロニカに関しての情報も聞き出せるかもしれねえ。そっちを期待しとこう)

 そうして……気絶したゲルシュトナー公が目を覚ますまで、私たちは豪華な客室で、ひと時の休息を過ごすことになったのであった。


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