魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

22.猛獣の目覚め -huntress-

 海風のように爽やかな笑い声が、客室に響き渡る。

「ハァッハッハ! これはどうも大きな借りを作ってしまった! まさか、四大公爵の一角である私ともあろうものが、精神を操られるなどとは、なんと情けない!」
(笑って流せる話じゃねーっての)
(ス、スレイバート様、聞こえますよ)

 苛立った表情で腕を組むスレイバート様の呟きに、私はついあせあせと彼の袖を引く。

 その目前で、しっかりとゲルシュトナー公は頭を下げた。

「この度は、私とこの城の住民たちを呪いから解放して下さり、誠に感謝する」
「い、いいえ……」

 その頭がスレイバート様からこちらにも向き、私はどうしていいかわからずに曖昧な笑いで応えた。

 あれから翌日にはゲルシュトナー公爵は意識を取り戻し、今はこうして直接私たちの元で、謝罪と経緯の報告に訪れてくれているというわけであり――。
< 932 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop