魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「そこで、国教として信頼のある精霊教会が祝福を与えた特別な塩を売り出せば、必ずや人々はこぞってむらがるはず。なんと、巫女のヴェロニカ嬢に祈祷をさせて祝福を授けさせるから、その売り上げの一割をこちらに寄進してほしい、という取引をセレーニテ公爵が持ちかけた、というわけです」

 両手を広げ、私たちは巻き込まれただけなのだとアピールするゲルシュトナー公。

 確かに、精霊教会の影響力は計り知れず、彼らに媚びを売るためにも間違いなくその商品は貴族たちに先を争って買われるだろう。だが、その見返りが利益の一割だけとは……ややこちらに有利過ぎて怪しくも思えてきたそうだ。

 しかし、ゲルシュトナー公には当時どうしてもお金が必要だった。

 なぜならば、金さえあれば、大体の問題は解決する。有能な人材も、この先領地にとって重要な情報も金さえあればなんでも手に入る。よって彼は、その口車に乗ることにした。ゲルシュトナー領は穏やかな土地ではあるが、塩と海産物以外の目だった生産品がなく、今後経済的に厳しい状況に陥ることは目に見えていたからだ……多分。

「あんたが楽したかっただけじゃねーだろうな?」
「いやぁ、そんなことは……。もちろんりょ、領民を思って熟慮に熟慮を重ねてのことで……」
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