魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 女王コルネリアスは、彼女にそれを決意させたとある出来事を思い返すと、なみなみと注がれた葡萄酒の杯を、不愉快そうに呷った。



 ――今回の王国の唐突な動きは全て、一月ほど前の、ある人物の来訪がきっかけとなった。

 王宮に突如姿を現したその女が身に着けていたのは、いかにも怪しげな漆黒のローブ。
 どうやって玉座の間まで入り込んだのか解せないが、彼女はベルージ王国伝統の、すべて女性たちで構成された近衛師団をたちまち無力化すると……無表情で待ち受けたコルネリアスに、小馬鹿にしたような、大仰な挨拶をして見せた。

「さすが、大陸一の女傑と名高い女王陛下にございます。あなた様だけは、私の魔法でも一筋縄ではいきそうにありませんわね」
「ふん……魔法士、それも凡俗ではなかろう。愛する我が兵たちを傷者にしたのは業腹だが、女の身なら許してやらんでもない……。余に忠誠を尽くすのならばな。名は?」

 頬杖を突き、喉元に迫った襲撃者に動揺も見せず恭順を迫る姿に、さしもの黒ローブの女も高らかな笑い声を上げ、フードを取り払って礼節を示して見せた。
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