魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 しかしヴェロニカは身じろぎもせずにその脅威を受け入れると、目の前にちらつく切っ先を楽し気に撫で、笑みを崩さず話を続ける。

「――スレイバートを、手に入れたくはありませんか? 彼は病の床から脱し、誰もが羨む極上の男に育ちました。世のすべての男を欲しいがままにしようという陛下が、それをこのまま捨て置かれていてよろしいのかしら?」
「…………ふん」

 感情を殺した表情のまま、コルネリアスの柄を握る手にぎりっと力が籠る。このまま、一刀の下にヴェロニカの首を刎ねてしまうのは簡単だが……さて。

 両者は瞬きもせず見つめ合い……空間に張り詰めた長い思案の時を経て、女王は巫女の提案を受け入れることした。

「余にとっては、男など暇つぶしの道具に過ぎぬが……いいだろう。アルフリードとは決着がつかぬまま逃げられてしまったからな。その責任を息子に押し付けるのも悪くはない。話してみよ……最後まで聞いてやるかは余の気分次第だが」
「うふふ……では」

 ヴェロニカは近づこうとしたが、それはまだコルネリアスが許さなかった。片手で自らの身の丈ほどもある鋼剣を軽々と維持したまま、話の続きを促す。それは己が実力を示す示威行為であるとともに、そのまま目の前の巫女への警戒の裏返しでもあった。
< 948 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop