魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 だが……今はわずかにせよ心が浮き立ち、身体に力が漲ってくる。

 あの男の息子――スレイバート。極北の英雄の名を継ぎし、冷酷な美貌と強き意志を併せ持つ若き勇者。噂では、死の縁から舞い戻り、父の遺した領地を見事に盛り立て、帝国を次なる時代に導こうとしているとか。

 今は亡きアルフリードの面影が脳裏へと浮かんだ。

(スレイバート・ボースウィン。はたして……お前は余を満足させてくれるのかな?)

 今度は、私が上の立場に立ち、やつを見定めてやる。あの男の息子が、本当にアルフリードを越えたのか。

 コルネリアスは野獣のような金の双眸を見開くと、丸々と太った極上の獲物(エサ)を見つけたかのように嬉し気に細め、枯れたはずの心がまた疼きだすのを歓迎した。

(~第五部へと続く~)
< 954 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop