魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「ったく、年寄りの冷や水ってのはこのことだよな。無理しやがって」

 スレイバート様もよっぽどの事態だと感じたのだろう。深い皺を眉間に刻むと言った。

「俺が出る。さすがにあちらさんが本腰を入れたとなると、クリムの部隊だけじゃ厳しいだろう」

 そしてもちろん、それをクラウスさんは止めようとする。

「なにを仰います! 領主自ら前線に立つなどとんでもない! あのような成金国家程度、私が蹴散らして御覧に入れますよ!」

 領民の精神的支柱である彼に、万が一のことがあってはならないと強く説得しようとするクラウスさんの主張を……だがスレイバート様は冷静に否定した。

「お前の力を軽んじているわけじゃない。が、向こう側が勝算ありきで攻めてるって言ったのはお前だぜ。なんらかの作戦を抱えてるのは間違いねーし、初動を誤るとそこで致命的だ。大規模な魔法が使える俺の方がそういう時、応用を利かせられるのは確かだろ。お前にはもしもに備えて、ここで領全体の指揮を任せたい」
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