魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 確かに……スレイバート様の魔法の力があれば、相手の作戦が分からない状態でも、後出しで対応できる可能性はある。クラウスさんはかなり渋い顔をして両手を握りしめた後――開いた両手のひらを思い切りバチンとほっぺたに叩きつけた。いろいろ言いたい思いを我慢して呑み込んだのだろう。

「ふぅ~……わかりました、わかりましたよ。それにスレイバート様自ら兵士たちに顔を見せた方が士気が上がるでしょうしね。ただし……くれぐれも、目立つような真似はしないで緊急時まで奥に引っ込んでいてくださいよ」

 するとスレイバート様は、両手を上に広げておどけてみせた。

「まあ、こんな目立つ形だから見つかる時は見つかるだろうけどな。せいぜいうまいことやってみせるさ。それに、悪いことばっかりじゃねえ」

 彼の腕がぐいと私の肩を引き寄せる。

「この戦にきっちりカタを付けりゃ、俺は救国の英雄サマだぜ? (はく)がつくだろ。そしたら、シルウィーとの結婚には誰も文句は言わせねえ。後で呪いの実行者……ヴェロニカのやつさえとっ捕まえりゃ、晴れてめでたしってわけだ」
「スレイバート様……」
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