魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 ルシドがきびきびと席を立つ。

「……っと、すみません。僕そろそろ仲間たちと領内の見回りにいかなきゃならなくて。討伐の要請が結構入ってますので、これで失礼します。スレイバート様、身の回りにはくれぐれもお気をつけて」
「おう、悪いな、俺が出られる状態なら、手を貸してやれるんだが……」

 この広いボースウィン領で、いつ倒れるか分からないスレイバート様が日を(また)ぐような活動をすることは好ましくない。それが分かっているルシドは、済まなそうな領主へ向けて笑顔で胸を叩いた。

「何をおっしゃいます。僕はあなた方に返しきれない恩があるんですから。こんな時こそこき使ってください。それに今は……ふふっ、少しでもシルウィー様との距離を縮めることに専念してもらわないと」
「…………ええっ!?」
「ははっ、分かってやがる」

 急にそんなことを言われて飛び上がる私を尻目に、気心の知れた雰囲気でふたりは笑みを交わし合う。

 あまり私と年は変わらないのに、ルシドの方がずっと大人だ。
 世間知らずの自分に嫌気がさしてがっくりと肩を落とす私の前で、若手の実力派騎士は爽やかに小さく手を振り去っていった。
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