魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「んじゃ、あいつの言葉に甘えて、今日はお前の相手をさせてもらおうかな」
「は、はい?」

 そしてスレイバート様も簡単に私の気持ちを落ち着かせてはくれない。

 雑にナプキンで口を拭うと、明るい笑みを浮かべて席を立つ。そんな仕草ですらどこか優美で目を引くのだから、男性慣れしていない私は恥ずかしさを押し隠すのが精いっぱい。

「村を救ってもらった礼だ、ついてきな。いいところに案内してやる。テレサ、お前も手伝ってやれ」
「いいところ……?」
「それは着いてみてのお楽しみというところですかしら。ささ、お姉様急いで」

 身を翻したスレイバート様に招かれ、嬉しそうなテレサに背中を押されれば、動かないわけにもいかない。私も首を捻りながら後に続こうとし――。

「あっ、すみません」

 ガタンと音が鳴った。座っていた椅子に長い髪をひっかけて倒してしまったのだ。
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