魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
……会議が始まり、部屋内から響く音の雰囲気が変わった後も。
私はしばらく壁に背を着けたまま、弾む胸を押さえて静かに俯く。
こんな非常時に彼の時間を奪ってしまう罪深さと、貴重な出立前の話し相手に選ばれた喜びをないまぜにした、割り切れない気持ちのまま――。
◆
「お姉様……帰ってきてくださったのですね」
「ごめんね、心細い思いをさせて」
テレサのもとを訪れると、彼女もまた憔悴した表情で、私に縋りついてきた。
聞くところによると、丁度ラルフさんが向こうに帰り着いた頃宣戦布告の報せが入ったらしく……ラルフさんは「オレたちにできることをする」と、カヤさんと一緒に急ぎリュドベルク領へ帰っていったのだとか。
私は彼女と一緒にソファに座ると、小刻みに震えるその華奢な身体を抱き締めた。
「城の者から聞きました。お兄様も、出陣なさるのだと」
私はしばらく壁に背を着けたまま、弾む胸を押さえて静かに俯く。
こんな非常時に彼の時間を奪ってしまう罪深さと、貴重な出立前の話し相手に選ばれた喜びをないまぜにした、割り切れない気持ちのまま――。
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「お姉様……帰ってきてくださったのですね」
「ごめんね、心細い思いをさせて」
テレサのもとを訪れると、彼女もまた憔悴した表情で、私に縋りついてきた。
聞くところによると、丁度ラルフさんが向こうに帰り着いた頃宣戦布告の報せが入ったらしく……ラルフさんは「オレたちにできることをする」と、カヤさんと一緒に急ぎリュドベルク領へ帰っていったのだとか。
私は彼女と一緒にソファに座ると、小刻みに震えるその華奢な身体を抱き締めた。
「城の者から聞きました。お兄様も、出陣なさるのだと」