魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
(やっちゃった……)

 粗相に肩を竦める私の前で、戻ってきたスレイバート様が椅子を引き起こす。髪の先を簡単に払ってくれた後、私の顔色を窺いそれを持ち上げてみせた。

「あー、うざってーんだったら切ってやろうか? この髪」
「え? えーと……」

 彼にそう言われ、私はどう答えたものか迷う。確かに、元々は父の迷信に従った末の産物で、こうまで長いと手入れも面倒だけど……。でも、ここまで長期間連れ添っているともはや自らの一部のようなもので、なにより瞳と同様で数少ない、肖像画の中の母と同じ部分なのだ。

 名残惜しく思う私の気持ちを察したかのようにテレサが口添えしてくれた。

「お兄様。軽々しく女性に髪を切れなんてデリカシーがないです。それにもったいないですわ、こんなに綺麗な黒髪、女性にとってはひとつの財産なのに。お兄様ともお揃いで素敵ではないですか」
「お前は伸ばしてねーから楽でいいだろうよ。俺はこいつほど長くねーが、それでも厄介なんだぜ? いっそ、シルウィーと一緒にすっぱり切っちまおうかな」
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