魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「ありがとな。大事に食べることにするよ」

 そんな説明をスレイバート様にした後、私は瓶から手を離そうとしたのだが……。

「…………」

 どうしてもなかなか指が離れない。これが……もし最後の贈り物になってしまったら――なんてことがつい頭の片隅をよぎってしまって。
 でも、そんな不安を……上から包んだスレイバート様の大きな手が打ち消してくれた。

「大丈夫だ、必ず無事に帰って来るさ。まだまだ楽しみにしてることが一杯あるからな。見せてやりてー景色や、教えたいこと、一緒にやってみてえこと……。俺は、お前のことをもっと知りたいんだ」
「私も……です」

 その言葉に力がすっと抜け、指から離れたガラス瓶はスレイバート様の両手に収まった。彼はそれを旅支度の荷物の中に丁寧にしまうと、再び私の隣に腰掛けて肩を抱いた。

「……こうしてわざわざ呼んだのは、お前と一緒に過ごしたかったこともあるんだけどさ。ひとつ、言ってなかったことを思い出したからなんだ」
「……はあ、なんでしょうか」
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