魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 手にかかる、さらさらとした銀髪が心地よい。まるで楽器の弦のように滑らかなそれを安らいだ気分で触らせてもらっていると、彼は瞼を伏せがちにして呟いた。

「昔、お前の母ちゃんが――マルグリットがここに来てた頃……俺、魔法の練習で制御を誤って氷漬けになりかけたことがあってさ。助けてもらえたまではよかったんだけど……その後風邪引いて、看病してもらったことがあったんだ」
「母にですか……?」

 そういえば、彼と母に交流があったことは知らされていたけれど、それについて詳しい話を掘り下げたことはなく、私は身を乗り出して聞き入った。

「ま、あの人魔法以外に関しちゃ結構不器用だったし、別になにをしてくれたって訳でもなく側にいてくれただけなんだけどな。その時俺……尋ねちまったんだよ。誰かと結婚しないのか、なんてな。ガキだったから、言葉選び知らなくてさ……」
「そ、そのくらい、誰にでもありますよ。多分……」

 未婚の女性に訊くにはやや配慮の欠けた質問だったとは思うが、もう二十年近く前のことになるのだろうし、元気な盛りの男の子ならそんなものだろうとも思う。やんわりと私がフォローすると、彼は恥ずかしそうに咳払いをして話を続けた。
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