魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「前話したけど、俺はあの人に新しい母ちゃんになって欲しかったから。熱でしんどい時に手を握ってもらって、なんか気持ちが良くなって……変に期待しちまってそんなこと言ったんだと思う。そしたらさ……それを察したか、あの人さぁ」

 喉の奥を震わせながら、彼は私を見つめた。その視線は「なんて言ったと思う?」と聞いていたが、私は首を傾げるばかりだ。
 なにせ、私は母のことを話でしか聞いたことがなく、まだいまいち想像がつかない。あれやこれや予想しているうちに、スレイバート様は次第に笑いを大きくしながら答えを明かしてくれた。

「お前みたいなやんちゃなガキの相手すんのはごめんだ、ってさ。ははは……ふざけんなっての! それが当時は悔しくってぶんむくれてさ、背中を向けてそのまま寝ちまったんだけど……。でもその後、ずっと頭を撫でてくれながら言ったんだ。二番目だったらいいよって……一番目は優しくて可愛い女の子に決めてるんだって」

 不思議にも、そんな情景が私の頭にぼんやりと浮かんだ。幼く愛らしいスレイバート様をあやしながら、いつか使命を終えた後の――未来を語る母の姿が。

「いつか……女の子を産んで、自分みたいなのじゃなくうんとお淑やかで優しい子に育てて、目一杯幸せにしてやりたいんだと……んなことを言ってたと思う、多分な。途中から寝ちまったから、ちゃんと思い出せたかどうか、自信はねーけど」

 そしてスレイバート様は、はにかむような笑みで私に笑いかけた。
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