魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「悪い、どう言ってやりゃいいのかわかんねーけど、でもさ……。マルグリットは、お前が生まれてくるのを、ずっと心待ちにしてたんだ、きっと。それを伝えたかった」
「……ありがとう。嬉しいです、とても……」

 今、目の前の彼を死地に送り出さねばならないという憂いに比類した、とんでもなく大きくて優しいものが、私の心を包んで温めてくれている。それはきっと、皆を介して伝えられた、母からの想いだ。
 スレイバート様だけじゃない。これまで聞いてきた色んな人たちの話が、私の中で朧気だった母の姿を少しずつ、くっきりと照らし出してくれた。おかげで今、まるで傍らに母が寄り添ってくれているかのような、この上ない心強さを私は感じている。

 だから大丈夫だ……恐怖に負けず、この人の帰りを希望を持って待っていられる。どんなことでも受け入れてくれると信じて、臆すことなく彼に伝えられる。

「スレイバート様、旅立つ前ですが、いいですか? 少し大事なことをお話しなければならなくて」
「……ああ、なんでも聞く。改まっていったいどうした?」

 勇気が出た私は、彼に感謝するとしっかり身体をそちらに向け、ずっと心に引っ掛かっていたひとつの話を切り出した。
 それは、私と彼の結婚に関わる大事なお話だ。
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