魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 そんな悲願へ蓋をしたのは、荒々しいキス。私のことなど考えもしない、ただ求めるだけの激しい情熱が直接こちらの唇にぶつかってきた。それは瞬く間に私の心を溶かし、彼に身体を委ねさせる――。

 とさり、とベッドに肩が着き……真上に彼の顔が見えた。
 淡い照明の中、やけにギラついた目付きのまま、肩を抑えつけた彼は言う。

「親がどうとか、率がどうとか……知ったことか。可能性がないなら作る。なんなら子どもなんてできなくたって別に構わない。俺がお前をそれ以上に幸せにしてやりゃいいだけの話だ。違うか?」
「…………でも、それじゃ」

 これ以上なく喜ばしい言葉なのに……ここへ来てまだ余計なことを気にしてしまう私を、彼の言葉が黙らせた。

「領地を率いるなんてのは、俺でなくたってできる。だがな……いるのかよ。お前をこの先、俺以上に幸せにしてやれるやつが」

 ――そんな人、どこにもいるわけない。

 なにも言えずに首を左右に振る。言葉ひとつずつに込められた彼の本気が、私の胸をどうしようもなく揺さぶり、打ち鳴らして……瞳から熱いものが滲みだす。
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