魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「なら、もうごちゃごちゃ悩む必要なんてねーだろ。お前は俺のもんだ……絶対に誰にも渡さない。これから先、ずっとな。それでいいだろ」
「……はい」

 強引で……でも私が一番欲しかった愛の告白の後、もう言葉を交わす必要なんてなかった。
 私も彼から離れるなんて、もう絶対に考えられないから……。

 覆い被さるようにした彼の身体に包まれて、私も必死にしがみ付く。

 言葉だけじゃなく――視界も、心も、感覚も、お互いを独占している。指を絡め、肌を重ね――あらゆる部位で愛を伝え合う。
 まだ涼しさの残る北の地での、蕩けるような熱い一夜。

 その記憶は、この先起きるどんな出来事よりも強く、奥深く、私の中に刻み込まれた――。
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