魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 私にとっても間近で体験することになる、初めての戦争。しかし、これからボースウィン家に所属し、この領地の一員として受け入れてもらうためにも、彼らと同じように心配がってはいられない。街に蔓延る不安を取り除くため、テレサと一緒に領民たちを励ましつつも、戦に関しての協力を呼び掛けていく……。



 そんなことを繰り返す日々の最中――ついに戦端が開かれたという噂が伝わってきた。ベルージ王国側は、これまでに類を見ないほどの大軍で国境線を攻め立てているらしい。

 しかしボースウィン領軍も善戦しており、スレイバート様の活躍も目覚ましいと聞いた。日数が経てば他の領地や王都からの援軍も届くはずで、それを考えればやすやすと敗北することはないはず。

 とにかく被害を押さえ、なるべく多くの人が無事に帰ってきて欲しい……そればかりを祈りつつ馬車で城に帰り着いた私たちを出迎えてくれたのは、いつも通りの気さくな顔で微笑むクラウスさんだった。

「や……おふたりともお疲れ様でございました。すぐに服を着替え、肩の力を抜いてお過ごしください」

 それに対し、ずいぶんと気を張った様子のテレサが答える。
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