魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「あっ……」

 その言葉を受け、つかつかと石畳を歩いて来る人物の姿を見た私たちは、目は丸くした。

「お母さま……!」「エルマ様!」
「お久しぶりね。ふたりとも息災だったかしら」

 現れたのは、テレサの母君であるエルマ様だ。
 以前とは違って、しっかりと装いを整えた彼女の姿は前公爵夫人たる風格があった。

 たちまち満面に笑みを浮かべたテレサがその胸の中に飛び込んでゆき、エルマ様もしっかりとそれを受け止める。

「いつこちらに来られたのですか!?」
「昨日の夜中に到着したところなのよ。スレイバートは……もう前線に行ってしまったみたいね」
「はい……」

 不安そうなテレサの頭を撫でてやると、エルマ様は私にもにこりと微笑みかけてくれた。
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