魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「大丈夫よ、あの子はアルフリードの息子だもの。野蛮な女どもの王国になど、遅れをとるものですか。シルウィー、この子の側に付いていてくれてありがとうね。不安でしょうけど……なにかあれば言ってちょうだい。あたくしもこんな時くらいは力になるわ」

 たまにエルマ様のことを知っているのか、渋い顔をして近くを通り抜ける臣下の人々を歯を剥き出しにして威嚇しつつ、彼女は自身もこれから私たちに同行するつもりだと説明してくれる。

 彼女は不足しがちな医療物資に加え、人脈を利用して各地から薬づくりや治療の心得のある人々を集めて連れて来てくれたらしい。治癒士の魔法ほどの即効性はないにしても、その人たちの力はこれから戦い傷付く人の大きな支えとなってくれるはずだ。

 そして戦の話になるなり、エルマ様は心底嫌そうな顔をしてこんなことを告げる。

「だーっ、あの年増女め、シルウィーの結婚前に余計な横槍なぞ入れてきて! ベルージの女王はね、自分専用の後宮なんてものを持ってるくせに、アルフリードにいたくご執心だったのよ。あたくしには分かるわ、絶対にあれは未練が残ってるわね。今回の侵攻だって、どうせあの人が忘れられないからって、息子のスレイバートにちょっかいかけてきたんでしょうに!」
「エ、エルマ様……滅多なことは」

 クラウスさんがそう押し止め、エルマ様は慌てて指で口に蓋をした。
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