魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「あなたが……スレイバート様や、カヤさんに呪いを掛けたのね。ゲルシュトナー領での塩のことも。どうして……いったい、この帝国でなにをしようとしているの? 本当にあなたは、闇の精霊に操られているの!?」

 事の真相を明らかにしたい一心で尋ねたそんな質問に、彼女は微かな驚きを示すと、意外そうに首を捻った。

「へえ、どうやらあなたに余計な入れ知恵をしたやつがいたらしいわね。まあいいわ……その質問には答えてあげる。私が帝国を滅ぼそうとしているのは本当。でも、操られているというのは正しくはないわね。すでにヴェロニカの意志なんてこの世の中には存在しないもの。この子も、この子の母も、私が全部呑み込んでしまった。それだけじゃないわ……教会ができた古い時代……。ベリカという少女が双子の妹を憎んだ頃から……ずっと、ずうっとそれを繰り返してきたのよ」
「……そんな」

 私はぞぉっとして自分の肩を掴んだ。闇の精霊は……元々あった身体の持ち主に乗り移るだけではなく、彼らの魂をまるごと……存在ごと取り込んでしまうのか。

 だが、そんな昔語りすら彼女にとってはこちらの油断を誘う道具でしかなかったらしい。見えないほどの速さで、袖口に隠された黒いナイフが指の間に閃くと、私に飛来する――。

『――させません!』
「…………チッ!?」
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