魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

4.王都への帰還 -confuse-

 奇しくも、私が王都に帰り着くときに辿った道は、輿入れの時に通ってきた道とそのままそっくり反対だった。ただし、森に積もった白雪はすっかりと溶けて、青々とした草葉が夏の到来を告げ始めていたけれど。

 民間の馬車で南にまっすぐ下り、スレイバート様と出会った地点を見てあの時の自分を思い出したりしながらも、私の頭からはヴェロニカの手紙の内容が頭から離れなかった。

 そこには、こう記されていた。

【あなたが喜ぶ真実を教えてあげる。当主ゴディアがあなたを物のように扱ったのは、私のかけた呪いのせいだったの。それさえなくば、たとえあなたが無能だろうと、マルグリットの忘れ形見としてた~っぷり愛情を注いでくれたことでしょうね。今、私の手は、彼の命を握っているわ。その上でどうするか、あなたに決めさせてあげる。哀れな父親を取るか、我が身可愛さを取るか……よく悩むといい。時間はそう残っていないけれどね……】

 ヴェロニカの含み笑いが聞こえてくるようなその文面には、こうも添えてあった。もし、このことを誰かに相談したり、王都に来る気配が感じられなければ……自分の手の者にスレイバート様を後背から襲わせると。

 今彼は、必死に目の前の苦境を跳ねのけようと戦っているところだ。そこへヴェロニカに操られた何者かが味方を装って近づけば、いかに強力な魔法戦士である彼といえど、不覚を取りかねない。
 だから、私の中に招きを拒むという選択肢はなかった。父の話を聞いた後では、なおさら……。
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