魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
そこからは脇目も振らず教えてもらった道順の通りに歩いていたが、私はある地点から非常に足が重くなった。
強く、感じたのだ……。近づくほどに、身体を締め付けるような、黒くて禍々しい闇の波動を。
(こんな……。ここまで、おぞましいことになっていたなんて……)
そうして、王都の北側の区画にあるその場所にたどり着いた私は、肺の中の空気をごくりと飲み下す。
見るからに神聖そうに見える白亜の大神殿の中心部からは……大空に向けてまるで、狼煙でも焚くかのように、煙のように揺らめく黒い柱が立ち昇っているのだ。
明らかに、瘴気よりも相当濃い、呪いの気配。病人や魔物が生まれていないのが、いっそ不可思議なほど。
そして私は、自分の足元が、どくどくと嫌な気配で脈打っているように感じた。この王都一帯から……いや、もしかしたらもっと広い範囲から、よくないものが吸い寄せられている。この建物の中心へと。
もはや一刻の猶予も許さない状態なのだと思い知らされる。ヴェロニカは、この力を使って、帝国中になにかよくないことを引き起こそうと企んでいるはずだ。そしてそれはすでに準備段階を終え、後は引き金を引くのを待つだけ、といった状態なのではないだろうか。
「そんなこと……絶対にさせるもんか」
強く、感じたのだ……。近づくほどに、身体を締め付けるような、黒くて禍々しい闇の波動を。
(こんな……。ここまで、おぞましいことになっていたなんて……)
そうして、王都の北側の区画にあるその場所にたどり着いた私は、肺の中の空気をごくりと飲み下す。
見るからに神聖そうに見える白亜の大神殿の中心部からは……大空に向けてまるで、狼煙でも焚くかのように、煙のように揺らめく黒い柱が立ち昇っているのだ。
明らかに、瘴気よりも相当濃い、呪いの気配。病人や魔物が生まれていないのが、いっそ不可思議なほど。
そして私は、自分の足元が、どくどくと嫌な気配で脈打っているように感じた。この王都一帯から……いや、もしかしたらもっと広い範囲から、よくないものが吸い寄せられている。この建物の中心へと。
もはや一刻の猶予も許さない状態なのだと思い知らされる。ヴェロニカは、この力を使って、帝国中になにかよくないことを引き起こそうと企んでいるはずだ。そしてそれはすでに準備段階を終え、後は引き金を引くのを待つだけ、といった状態なのではないだろうか。
「そんなこと……絶対にさせるもんか」