魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
一般人の立ち入りを禁じられた大神殿の向こう側を、なにも知らない幸せそうな親子が横切っていく。その姿を見ながら、私はぐっと拳を握りしめた。
国を守るだなんて大それたことは言えないけど、でも……ここでなんとかヴェロニカの計画を食い止め、私たちの平和を取り戻す。
「見てて、お母さん……」
私はそう呟くと、恐怖に震える奥歯を噛み締めて息を吸い込み、なんとか自らの気持ちを奮い立たせようとした。
胸のペンダントを握りしめると、日差しのような熱を手のひらに感じ……。
頼もしい精霊たちの存在に、なけなしの勇気を復活させた私は顔を上げた。
(……ありがとう。なんとかやってみます)
大聖堂の入り口は昼間にもかかわらず、ぽっかりと黒い穴を広げている。それ自体がまるで別世界に誘う、ひとつの扉であるかのように。
二度と戻れないかもしれない……そんな気持ちを味わいつつも、ここで逃げ出すことなど許されない。
絶対に、なにがあってもスレイバート様のもとへ帰りつく――それだけを念じて。
懸命に怖れを振り払うと……私は人気のない暗闇の中へと、一歩ずつ足を進めていった。
国を守るだなんて大それたことは言えないけど、でも……ここでなんとかヴェロニカの計画を食い止め、私たちの平和を取り戻す。
「見てて、お母さん……」
私はそう呟くと、恐怖に震える奥歯を噛み締めて息を吸い込み、なんとか自らの気持ちを奮い立たせようとした。
胸のペンダントを握りしめると、日差しのような熱を手のひらに感じ……。
頼もしい精霊たちの存在に、なけなしの勇気を復活させた私は顔を上げた。
(……ありがとう。なんとかやってみます)
大聖堂の入り口は昼間にもかかわらず、ぽっかりと黒い穴を広げている。それ自体がまるで別世界に誘う、ひとつの扉であるかのように。
二度と戻れないかもしれない……そんな気持ちを味わいつつも、ここで逃げ出すことなど許されない。
絶対に、なにがあってもスレイバート様のもとへ帰りつく――それだけを念じて。
懸命に怖れを振り払うと……私は人気のない暗闇の中へと、一歩ずつ足を進めていった。