明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
 指先でツツと顔をなぞられて澪の肩がふるえる。桐吾に何かされるたびジンと痺れてしまうのは何故。

「――もう白玉にベタベタさせるな」
「え……どうして」
「澪は俺の妻だろう?」

 澪は目をまん丸にした。にらむような桐吾のまなざしなのに、不思議とドキドキする。桐吾の指はそのまま唇をなぞった。

「んっ……」
「他の男が澪にさわるのは許せない」
「でも、白玉は猫で」
「さっきの姿は違うよな?」

 暴れる心臓に困り果てた澪は目を伏せた。だが桐吾が容赦なく顔を上げさせる。その片手に澪の頬からあごがすっぽりおさめられてしまった。

「あの……ごめん、なさい」
「もうしないか?」

 澪はかすかにうなずいた。そんなこと、桐吾が嫌がるならしない。白玉のことは猫の姿で可愛がればいいのだし。
 手の中でうなずいた澪を、桐吾はグイと抱き寄せた。体をすっぽり腕に包む。

「え」
「こんなことをするのは俺だけだ。いいな」
「は、はい」

 骨に伝わる澪の声とかすかなふるえ。それを心地よく感じながら桐吾は我に返った。

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