明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
(――おい、俺は何を)

 澪を抱いたまま、桐吾は自分の行動に驚いた。怒りに任せ発作のように澪を引き寄せたのだが。

(しまった。これはどう決着をつければいい?)

 こんなふうに感情をそのままぶつけるなど、したことがない。桐吾はいつも計算ずくで行動し、周囲を動かしてきた。今の状況はむしろ未知の領域だ。

「み、澪……」
「桐吾さん……?」

 腕の中で身じろぎする澪からはボディシャンプーの匂いがした。桐吾の血が騒ぐ。すぐ胸の前を見下ろせば、潤んだ瞳。

(――いっそ、このまま?)

 考えて桐吾の背すじがゾク、とした。澪を自分のものにしてしまいたい。

「……桐吾、さん」
「ああ」
「あの、あのね。私の愛って」

 澪の声がふるえた。愛。桐吾の呼吸が速くなる。

(愛してもいいのか)

 澪のまなざしが桐吾にすがりついた。

(……私どうすれば。わからないわ桐吾さん)

 桐吾の腕に力が入る。澪はおそるおそる薄紅の唇を開いた。

「――私、愛と哀しみで祟ったんですか? それって普通じゃないわよね? 私の愛が変だから、桐吾さんはこうして〈妻〉らしさを教えてくれるの? でも祟るほどの愛って気持ち悪くないですか?」

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