明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
 澪は必死にまくしたてた。そしてビクビクする。
 愛と哀しみと桐吾の怒りについて考えながら抱きしめられていた澪。頭がぐるぐるし、もうまともな判断力が残っていなかった。
 ぼんやり思う。桐吾から「確かに気持ち悪い」なんて言われたらどうしよう。

(そんなの死んじゃう!)

 もう死んでるけど。
 桐吾は硬直して澪を見おろしていた。スルリ。ほどいた手で顔をおおう。深呼吸をくり返しているのが澪にもわかった。

(あ。やっぱりあきれられた……?)

 絶望が澪を包んだ。馬鹿なことを言わなければよかった。
 だが出鼻をくじかれた桐吾は羞恥にまみれていただけだ。ひとり勝手に盛り上がっていただけと知り、死にそうな気分。なんとか体面を保とうと努力する。

「……み、お」
「はいっ。ごめんなさいっ」
「……おまえは愛する者を失った。その哀しみで魂がこの世に残ったんだろう。だから〈愛と哀しみ〉により祟ったと、白玉は」
「え、ええ……そうなのかも」
「つらかったんだな。何もおかしくないと思う」

 やさしく言ってもらえて澪は深く安堵した。必死に冷静をよそおう桐吾は話をそらす。

「白玉はどうして死んだんだ」
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