明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
 欲望にまみれた自分が情けない。桐吾は澪のことをあらためて見つめた。
 実用的なスウェットに身を包み、ちんまりとソファに座る姿。気高いとは言えない格好だが、愛から生まれた天使のように思えてくる。いや、天使ではなく神か。祟り神といえど「神」とつく。

「清らかな心で現世をさまよう……それで澪姫と」
「や、やだ。姫はやめて下さいってば」
「だが澪姫という名で伝承が残ったぐらいだ。村の人々は澪の気持ちを知ってくれていたんじゃないか?」
「そう……かしら」

 へにゃ、と澪は笑った。

「だといいな……」
「だが」

 桐吾はハタと思考を切り替える。これでも世間では優秀で通る男だ。

「白玉が喰っているのは邪気だな。マイナスの気を源に神気を練っているからだが……」
「ふ、ふうん?」
「ならば澪は……プラスの気? 何を取り込めというんだ?」

 いきなり難しいことを話し始めた桐吾に澪はついていけなかった。

(うーん……眠くなっちゃう。ああ私、妻としても駄目だわ)

 そう思うくせにあくびが出てしまう。あふ、とかみ殺す仕草を見て、桐吾は小さく苦笑いした。
 眠たいとはまた――色っぽい雰囲気とは完全に無縁。そう駄目押しされた気がした。

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