明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
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そして澪と桐吾はしばらくぶりに祠へと足を運んだ。二人の出会いの――というにはあまりロマンチックではない場所だが。
林は落ち葉に埋もれていて、桐吾はザザと茶色く乾いた葉をかきわける。出てきた猫塚を白玉はフンフン嗅いだ。
「――何も起こらないな」
桐吾は少しホッとした。
今日の澪は生前の足跡をたどった。自分の人生に納得したあげくに祠に来たら――成仏してしまうのではと危惧していたのだ。
だが考えてみればここは澪を封じていた場所。何かが起こるとすれば成仏ではなく再封印になるのだろうか。
「私の祠……幽霊になってうろうろしていたから久世の人がお祓いでもしたのかしら」
「だろうな。でも祠は村のみんなで世話していたと書かれていたぞ。最近は忘れられてしまったようだが」
壊れた祠の木材を桐吾は確認する。小さいが梁のある屋根。厚めの板材。大事にされてきたのは本当だと思う。
「これを放っておくのも忍びない」
「でも建て直したら、私また封じられちゃう」
「そういうものなのか? 術が解けていればもう――ん?」
壁板を動かしたところに小さな木箱があった。潰れかけていて、蓋がずれている。
「これは――」
祠に納められていた物なのか。そっと拾い上げた桐吾は澪の前で蓋を外した。布に包まれた何かが入っている。うながされて澪はそれをほどいた。
「――!」
澪の目にみるみる涙が浮かんだ。