明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
「そ、そんなこと……桐吾さんなら自分で調べられたでしょ」
「さあ。どうだか」

 言葉とうらはらに桐吾が自信に満ちた笑みを浮かべる。仕事に関することなら誰にも引けを取るつもりはない。それに澪に評価されるのが素直に嬉しかった。

「――とまあ桐吾は無事に出張を終えたわけだが」
「わっ!」

 いきなり後部座席から白玉の声がした。今まで猫の姿をつらぬいていたくせに、一日の最後になって人の形を取ったらしい。澪もびっくりして振り向いた。

「どうしたの白玉?」
「……シートベルトしろ」

 ミラーで確認した桐吾は苦虫をかみ潰したような顔だった。おとなしかったので存在を忘れかけていたのだが、なんだというのだろう。
 カチンとシートベルトを締めた白玉は水干姿。車に乗っている子どもとしては妙な格好だ。

「澪よ」
「なあに」
「身の内に神気を感じぬか」
「え?」

 突然の言葉に澪は息をのんだ。
 神気。

「今日の澪は力の源にふれた。腹の中にフツと湧くものがあろう」
「え、え。そんな」

 うろたえた澪は両手でお腹を押さえた。ぐうぅ。鳴ったのは、ただの空腹の虫。

「ははっ」

 桐吾がつい声に出して笑う。顔を赤くした澪は情けなさに肩を落とした。

「やだもう……」
「ああ、笑って悪かった。どこかに寄って食べていくか?」
「……いいですっ」
「笑いごとではないのだぞ。きちんと〈祟り神〉としての力を思い出さねば、澪などそのうち消える」

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