明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
 ✿ ✿


「おはようございます部長。出張はいかがでしたか?」

 地域開発二部へ出勤した桐吾にハキハキと近づいたのは高橋華蓮だ。本当は同行したかったという気持ちをおくびにも出さないのは秘書の鑑。

「――有意義だった」

 桐吾の返事は歯切れが悪かった。
 現地調査の成果はこれから検討するつもりだ。個人的にも澪という人間をさらに知ることができ満足だった。
 だが、祟り神としての力がどうのこうの、は予想外過ぎてぶっちゃけ疲労を感じている。

「……何かありましたか」
「いや。問題ない」
「はあ……申し訳ありませんが、留守中にSAKURA観光開発の桜山守さまよりコンタクトがありました」

 それは向日葵のことだった。桐吾が顔をしかめるのも失礼だが、「申し訳ない」と断りを入れてから言う華蓮も相当なもの。上司に完ぺきに寄りそっているところはさすがなのだが。

「合弁事業の件を含め面会を、だそうです」
「……含め(・・)?」
「そう申し込まれました」

 桐吾がしかめ面をする。この頃表情が豊かになったな、と華蓮は思った。表現するのはおもにマイナス方面の感情だけど。

< 133 / 177 >

この作品をシェア

pagetop