明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします

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「呼び出しに応じていただき感謝ですわ、久世さん」

 オフィス街の一角にあるカフェ。明るい窓辺の席で片手を上げたのは桜山守向日葵だった。桐吾は自分のコーヒーとサンドイッチを手にして隣に座る。

「今日はその呼び方なんですね」

 以前会った時には「桐吾さん」と名を呼ばれていた気がするが。向日葵は余裕の笑みを浮かべた。

「だって今日はビジネスですわよ。わたくしTPОはわきまえておりますの」
「確かに。合弁事業の話がメインでした」

 だったらそのしゃべり方ももう少しビジネスライクにできないか、とも思うがそれは言わない。

「どのような用件ですか」
「そうですわね……まあ食べながら参りましょう」

 いちおうランチへのお誘いなのだった。だがそれぞれ持ち寄りで偶然隣り合わせただけ、みたいなやり方をするのは社内的に何かあるのだろうか。面倒くさい事案の予感がする。

「SAKURAからの提案書、いかがでしょう?」
「目は通しました。現在対案を制作中です」
「あら。納得いただけませんでしたのね」

 桐吾がさらりと出したカウンターのひと言を正確に受けてくれる。その意味で向日葵はとてもやりやすい相手だと思った。

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