明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
 報告を信じないわけではない。状況的に忠親自身も疑ってはいたが、実子による背任――となると、とにかく不愉快。そのひと言に尽きる。
 だがさすが忠親、「疑われるあやつが間抜けじゃ」と一喝し、証拠固めを桐吾に命じたのだった。息子だろうが忖度はない。事実であると証明できれば即刻解任するだろう。

「まあそう簡単にはいかないだろうが……」
「私に何かできればいいのに」

 仕事に関しては協力のしようがない澪はしょんぼりした。
 桐吾は横目でチラリとし、こっそり微笑む。今日の澪はいちだんと可愛くて、目にするだけで和むのだった。

「爺さまを懐柔しただけで十分だ。澪のひととなりが伝わったんだろう」
「私の?」
「……のんきで悪気のかけらもない所とか、かな」
「それ、ほめてます?」

 馬鹿にされたようにも聞こえる。澪が難しい顔をしてしまうと、桐吾はたまらず笑い出した。

(――桐吾さんが、笑ってる。声をあげて)

 出会った頃には考えられなかった桐吾の笑顔。
 それがとても嬉しくて、澪は一緒になって笑った。

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