明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
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 帰宅した澪と桐吾は、リビングに入るなり立ち止まった。
 奥の一点に目が釘付けになる。桐吾のワーキングスペースに畳敷きの一角が出現していたのだ。

「おう、帰ったな」

 二人をニヤリと出迎える白玉は小学生の姿だった。つまり、きちんと現代風に着替えている。なんの必要があったのかといえば――もちろんこの改装のためだ。

「白玉、あの畳はどうしたの?」
「うむ、ポチってみた」
「ぽち?」

 通販で注文するというのを澪はまだよくわかっていない。だが邪気とともに知識を吸収する白玉にかかればお手のものだ。
 桐吾のPCから澪のマットレスなどを購入した時の履歴に侵入し、支払いは桐吾のクレカ引き落としにした。配送は桐吾たちのいない今日を指定。受け取りのために普通の小学生ぶったというわけだ。とことん家主を馬鹿にしている。

 澪は白玉のやらかしたリフォームを見に行った。
 半畳の縁なし畳を四枚、二畳分のスペースが確保されている。そこを軽く隠すことができるついたてまであり、さらに猫ちぐらが澪の部屋から移動されていた。白玉は自慢そうに胸を張る。

「我の部屋の完成というわけよ」
「ちょっと待て、俺のハンガーラックが」
「リビングに移動した。別によかろう?」

 畳を敷いた場所はもちろん、これまで空いていたわけではない。桐吾の会社用のスーツとワイシャツが掛かったラックがあったし、床に通勤鞄が転がっていた。それを強制排除して白玉部屋が作られたのだ。
 リビングとワーキングスペースは境い目が半分ほど仕切られている。そのリビング側に有無を言わせず移動させられているラックと鞄に桐吾は情けない顔をした。

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