明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
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出社後、頃合いをみはからった桐吾は、硬い表情を作り伯父のもとを訪れた。
アポなしだ。会議も出張もないのは把握済み。荒々しくノックし、返事を待たずにドアを開けた。
「失礼します」
「な、なんだ桐吾!」
不愉快な顔で怒鳴る、常務の正親。
おりよく一人だ。正親は偉そうなうえ人使いが荒いので秘書課から嫌われている。呼ばれない限り誰も常駐していないのだった。
人の目がないならと桐吾は思いきり伯父をにらんだ。
「なんだじゃないですよ。高橋華蓮のことなのですが」
「う、うぐ」
後ろ暗いところがある正親は言葉に詰まる。桐吾はいつもの無表情ではなく、怒りをあらわにしていた。端正な顔立ちでそうされると正親など迫力負けする。
「その反応、うちへのスパイ行為を認めたととっていいんですね」
「う、うるさい! なんのことだ!」
「今さら言い逃れるつもりですか。高橋のミスをあげつらい、解雇をちらつかせて脅したことはバレています。高橋が吐きました」
「あの女……!」
正親の顔が醜く歪んだ。どう言い返してやろうかと考えるが、それよりも桐吾が早い。
「これは明確なパワハラに該当します。それどころか高橋が警察に相談すれば、脅迫の刑事事件として立件されかねない。とんでもないことをやらかしましたね」