明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
「みゃう」
「ん、だいじょうぶ。コレを持っていくのよね」

 澪の手にあるのは小さなスティック――USBメモリ。

「にゃぁーう」

 スリスリする白玉を抱きしめ、澪は想い描いた。今たどり着くべき品のことを。木箱に入って目的の場所に置かれたはずの――。

「冬悟さんがくれた櫛……ああ、ちょっと遠いけど」

 見失うことなどない。
 冬悟と過ごした穏やかな日々。ほんのりときめいた心。大切な、大切な思い出。

 百五十年前にもらった愛をたどり、澪は飛んだ。



 ――――ふわり。
 澪が立っていたのは、さっきまで桐吾がいた役員室だった。机の端に木箱がそっと置いてある。

「みゅ!」

 腕から飛び降りた白玉がポン、と人の形をとった。そしてササッとドアに内側から鍵をかける。これで誰かが来ても逃走の時間は稼げるだろう。
 そして白玉はデスクのPCをチェックしうなずいた。

「ほうほう……桐吾が言っていたまんまじゃな。これならいけるであろ」
「そう? よかった、お願いね」

 正親のPCは立ち上がったままだ。桐吾の急襲に遭ったので使用中のファイルが開きっぱなし。もちろんログアウトされていない。隅々までアクセスし放題だった。

「さてさて……」

 白玉はリハーサルした通りにメールを開く。そしてUSBメモリを差すと、内容をコピー。
 重厚なデスクに陣取り、カタカタと手慣れたようすで作業する水干姿の少年はとてもシュールだった。

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