明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
「よし。終了じゃ」
「すごいわ白玉。じゃあこれで」
「櫛も忘れるでないぞ」

 澪は微笑んで木箱を手に取った。〈飛ぶ〉ための目標にした、大切な想い出の品。
 そこでドアが外からガチャガチャされる。

「なん、なんだ? 鍵なんぞ掛けたおぼえは……」

 ドアの外でブツクサ言う男の声が正親なのだろう、澪と白玉は顔を見合わせて笑いをこらえた。
 白玉からUSBメモリも受け取り、ポフンと元に戻った白猫を抱く。
 もう帰るだけだ。桐吾と暮らす、あの部屋へ。


 ――桐吾。無愛想で、時々いじわるで、祟り神なんかを拾ってくれるおかしな人。
 澪は微笑んで願う。
 帰りたい。本当はとてもやさしいあの人と一緒にいられる場所へ。

 見失うことなどない。
 桐吾への、この気持ちを。


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