明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
 両手で包んだ澪の頬は冷たくて、桐吾も凍りつきそうになる。目尻に涙がにじんだ。

「澪。澪。おまえがいなきゃ俺は――」
「……やん、待って桐吾さん。消えるってなあに」
「は?」

 頬を押さえられて微妙にもごもごしながら澪が言った。びっくりして目を見開いている。

「私ちょっと疲れちゃったけど、寝てれば平気よ。だって――」

 布団ごと抱きしめられながら澪はもじもじした。
 神気は使った。かなり使った。それは飛んだ距離が遠かったのと、見知らぬ場所へという難しさからだろう。なので疲れてフラフラになりはしたのだが――澪は消えたりしない。


 だってもう、澪の中に〈愛〉はあった。

 うとうと眠りながら、澪は想っていた。
 手をつなぎ、頭をなで、抱きしめてくれた桐吾。
 にらまれ子ども扱いされ憎まれ口を叩かれることもあったけど、とろけるようにやさしいまなざしもくれる人。

(大好き――桐吾さん。桐吾さん)

 そう念じながら眠っていたら、神気は回復してきていた。
 〈愛〉はもらうだけではない、自分で生み出すこともできるから。


「――私、大好きなものがたくさんあるでしょう? そのことを考えていれば消えたりしないの。だいじょうぶ」

 恥ずかしいので「桐吾のことを想っていた」とは言わなかった。だって桐吾があんまり近くて無理。澪のことを絡めとるように見つめる桐吾のまなざしが熱く、澪の顔はいっきにホテホテになった。
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