明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
断罪と未来
✿ ✿
「――これでバッチリですかしら。メールの情報をいただけたおかげですわ、あなたと組んで正解でした」
「こちらこそ」
桐吾に軽く頭を下げているのは桜山守向日葵だ。桐吾の手には素っ気ない茶封筒。SAKURAホールディングスから久世正親に渡った金に関する調査書だった。
ここは最初に向日葵と会ったのと同じ、公園内のカフェだった。
あの時は秋だったが季節はすっかり進み、木々は寒々しく枝を広げていた。屋外のテーブルに陣取る客は他におらず密談には最適――ただ、大柄な美男美女という二人の見た目は少々人の目を惹いている。
白玉が持ち帰ったUSBメモリ。そのメールファイルからSAKURAホールディングス側の窓口が判明した。それを基に向日葵も水面下で社内を調査。久世建設との癒着の証拠を揃えている。
今日は互いの成果を交換するためにアポを取ったのだった。どちらの社もこれらの情報を基に公式の調査を行うことになるだろう。関わった者たちの処分はそれからだ。
「弾劾実行は年明けですわね。ふふふ、のうのうとしていられる最後の正月を楽しむがいいのですわ!」
「……どうしてそう勇ましいんです、あなたは」
うんざりした顔で桐吾は突っ込んだ。それを見て向日葵が片眉を上げる。
「あら、そんなふうに感情をあらわにしてくださるなんて。わたくしに心を許していらっしゃる? それとも――あちらの可愛い方に感化されまして?」
向日葵がチラリと視線を動かした先にいるのは、公園内を散歩している澪だった。今日は白猫姿の白玉を連れている。
葉を落とした鈴懸の梢。
その向こうに建ち並ぶ高層ビル。
見上げる澪の長い髪を冬の風がさらう。ながめた桐吾の頬に笑みが浮かんだ。
「――そうですね。澪のおかげです」
「あらまあ。ごちそうさまですわ」
向日葵にからかわれても桐吾は気にかけない。澪を愛して何が悪い、と最近は開き直ってきていた。
「――これでバッチリですかしら。メールの情報をいただけたおかげですわ、あなたと組んで正解でした」
「こちらこそ」
桐吾に軽く頭を下げているのは桜山守向日葵だ。桐吾の手には素っ気ない茶封筒。SAKURAホールディングスから久世正親に渡った金に関する調査書だった。
ここは最初に向日葵と会ったのと同じ、公園内のカフェだった。
あの時は秋だったが季節はすっかり進み、木々は寒々しく枝を広げていた。屋外のテーブルに陣取る客は他におらず密談には最適――ただ、大柄な美男美女という二人の見た目は少々人の目を惹いている。
白玉が持ち帰ったUSBメモリ。そのメールファイルからSAKURAホールディングス側の窓口が判明した。それを基に向日葵も水面下で社内を調査。久世建設との癒着の証拠を揃えている。
今日は互いの成果を交換するためにアポを取ったのだった。どちらの社もこれらの情報を基に公式の調査を行うことになるだろう。関わった者たちの処分はそれからだ。
「弾劾実行は年明けですわね。ふふふ、のうのうとしていられる最後の正月を楽しむがいいのですわ!」
「……どうしてそう勇ましいんです、あなたは」
うんざりした顔で桐吾は突っ込んだ。それを見て向日葵が片眉を上げる。
「あら、そんなふうに感情をあらわにしてくださるなんて。わたくしに心を許していらっしゃる? それとも――あちらの可愛い方に感化されまして?」
向日葵がチラリと視線を動かした先にいるのは、公園内を散歩している澪だった。今日は白猫姿の白玉を連れている。
葉を落とした鈴懸の梢。
その向こうに建ち並ぶ高層ビル。
見上げる澪の長い髪を冬の風がさらう。ながめた桐吾の頬に笑みが浮かんだ。
「――そうですね。澪のおかげです」
「あらまあ。ごちそうさまですわ」
向日葵にからかわれても桐吾は気にかけない。澪を愛して何が悪い、と最近は開き直ってきていた。