明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
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 その後、臨時に招集された取締役会で正親の背任と告発が発表された。もちろん常務取締役の解任もだ。
 そして、次期社長として桐吾を推薦するという会長の意向も通達される。桐吾自身は非常に迷惑だったのだが、あちこちから意外と好意的な声があがった。年は若いが、真摯に業務に取り組む姿勢と実績は社内に知られていたらしい。
 ――その会議の内容は、即日社内に共有された。



「――おめでとうございます!」

 取締役会から地域開発事業部第二部に戻ってきた桐吾を歓声が迎える。直属の上司が今後出世確定との報で、部内は湧き立っていたのだ。
 そのざわめきに他部署からも人が集まってくる。若い女性社員が多数いるのは、冷徹だがイケメン御曹司で通っていた桐吾をひと目見ようという好奇心だろう。あわよくば、という気持ちもあるかもしれない。

(……ほんと、部長ったら罪な人)

 澪の存在を知っている華蓮はこっそりため息をついた。あきらめの境地にはいるがまだ胸はチリチリする。不思議と澪のことを憎めないので、恋の終わりは不完全燃焼気味だ。

「あの――桐吾さん?」

 ざわめきの中をすんなり通る声がして、フロア全体が振り返った。
 そこにいたのは澪だ。社員ではない。呼ばれた「桐吾」とは誰だったかと誰もが首をひねった時、冷徹部長・久世が立ち上がった。

「どうした。爺さまと一緒じゃなかったのか」

 ふわりと笑んで応える、甘い声。部下たちは凍りついた。

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