明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
 クリーミーだがほろ苦い香り、そして脳天を直撃する糖分。
 一瞬目を見開き、その後ふにゃあ、と澪はとろけた。

「――澪?」

 ほうっとなっていたら桐吾に呼ばれた。ハッとして見れば桐吾が苦笑をこらえて渋い顔をしている。

「ご、ごめんなさい。おいしくて」
「そうか」

 しかつめらしい顔を保ちつつ肩をふるわせそうになった桐吾と、ほんのり顔を赤らめる澪。二人を見比べた向日葵はため息をついた。

「そういう御関係ですのね」
「――申し訳ない」

 桐吾は表情をあらため謝罪した。「そういう」――恋仲のように見えてくれたのなら大成功。そんなところに割り込んでも利がないと思ってもらいたいものだが。

「大変な失礼をしたと思っています。私にはこの人がいるので今回のご縁はお受けできない」
「正式に申し込んだのは久世の方からだったかと」
「私は了承していません。伯父が進めた話です」
「では、不義理の責任は伯父上にあると? 久世の中のことではございませんの? 久世として対応すべきでは」

 向日葵はズバリ「不義理」と言った。内々のコンセンサスを得ずに暴走した者がいたとしても桜山守には関係ない。つまり――「どうやって落とし前をつけてくれるんだ、ああん?」と上品に尋ねているのだった。
< 72 / 177 >

この作品をシェア

pagetop