明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
聞いたような言葉が向日葵の口から出て、澪はキャラメルマキアートにむせた。
「けほ、けほん!」
「あらあら。澪さんったら本当に可愛いわぁ」
無言でス、と紙ナプキンを渡す桐吾とのようすを見ながら向日葵は笑った。
「こういう女性をお好みってことは、わたくしなんて眼中にありませんわよね。それも条件に合致しますの」
「……条件?」
桐吾のまなざしが不機嫌になった。契約夫婦というのは桐吾自身も澪に持ちかけた話だ。しかし逆に人からやられると値踏みされているみたいで気分が悪い。とんでもなく我がままな感想なのは承知だ。
「見合い相手に何を求めていると?」
「そうねえ。わたくしの隣にいて見劣りしないこと――容姿と家柄と職業的に。あとはわたくしに妻の役割を求めないこと――それは出産だの家事だのを含めて、ですわね。それが最低限」
「――なかなか強気で、失礼だ」
それは夫婦といえるのか。澪はポカンと口を開けた。あわてて手で閉じる。
(え――あ、でも私と桐吾さんもまあ、うん)
澪は家事をろくにしていない。出産……につながることもしていない。でもいちおう妻と呼ばれている。
(じゃあ向日葵さんの言い分もあまりおかしくない……のかな?)
いや、すごくおかしい。桐吾は自分を棚にあげてため息をついた。
「そんな話を受けると?」