明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
「わたくしが欲しいのはビジネスパートナーですの。二つの意味でね」
「二つ?」
「ビジネスライクにパートナー役……つまり立場上の夫婦をやってくださる人。そして言葉通り事業をともに経営できる人。久世桐吾さん、あなたはぴったりよ。いかが? 実質の妻の座は澪さんが占めてらしていいわ。悪い話じゃないと思うのですけど」

 にっこりと桐吾に迫る向日葵の姿勢は完全に業務提携の打診だった。なるほどビジネス。だが桐吾はにべもない。

「悪い話でしかない」
「あら」
「澪にとって単純にデメリットだ。正式な妻でないことの不利益は現時点で社会的にも法制上も大きすぎる」
「そうですわねえ。あなたがフリーで親族からの縁談攻勢に悩んでいるなら、提案に乗っていただけるかもと思いましたけど。澪さんの存在は誤算でしたわ」

 舞い込む縁談に辟易するのは良家の子女としてお決まりのパターン。確かに桐吾も澪に会っていなければ即座に却下せず考えた可能性はある。
 だが今の桐吾には澪がいた。桐吾から事前に断られるのは向日葵にとっても予想外だったらしい。肩をすくめてみせるが、向日葵はそれでも上品。めげないお嬢さまはえげつないことを言った。

「澪さんには我慢させてしまうけど、夫にそれ以上のメリットがあればチャラじゃありません? それにそうね、ある程度の期間が経過したら離婚もできますわ。それから再婚なさるとか」
「澪を馬鹿にしないでもらいたい」

 桐吾の声が凄みをおびた。
< 75 / 177 >

この作品をシェア

pagetop