明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
 ――峰ヶ根は、森沢家があった村だ。そして久世が乗っ取った土地。
 今は町となっていて、久世が所有している不動産も多い。桐吾はすこしバツが悪そうにした。

「仕事の話だ。澪には言ってなかったな」
「大都市近郊ながら自然の残る地域ですのよ。久世にゆかりの土地なのですけど、そこと近隣の駒木野(こまぎの)付近も合わせてリゾートを誘致する企画が進んでいるのですわ。だから(・・・)わたくし、あなたと組みたくて。お見合いの理由のひとつですわね」

 向日葵は静かに笑む。桐吾は表情を消した。
 今の向日葵の言い方は、何か意味深だった。もしや桐吾と駒木野の縁(・・・・・・・・)を知っているのか。

(経歴を調べられていたか)

 察する桐吾の隣では澪がうつむいていた。きゅ、と両手を握りしめ、つぶやくのは久しぶりに聞いた村の名まえ。

「こまぎの……」
「お姉ちゃん」

 白玉が心配そうにのぞき込んだ。
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